「告られちゃったァ」
ケラケラと笑うのは雪菜だった。
人の告白シーンほど見ていて楽しいものはない、と彼は思う。
どっちに転んでも自分には影響がないし、うまくいけば修羅場も見れる。
人と人の憎しみ合いを見るのが、雪菜の悪い趣味だった。
その後和哉は返事を待ってると言って去っていった。
後姿に哀愁を感じつつ、二人は黙ったまま見送った。放課後の今、彼はすぐに部活動に戻っていったのだろう。
先ほどは気がつかなかったが、ユニフォームだったし。
体を起き上がらせ伸びをすると雪菜は、はふとあくびをした。
無理もない、日もとうにくれている。
「この姿のほうが有利だと思ってたけど、そうでもないみたいだな」
「ん?何?何が有利?」
「隣の組の悠里ちゃん最近見ないなーって」
「さっき通り過ぎてったけど?」
「……とにかく帰ろう。雪菜お腹減ったぁ」
誤魔化すように宇美をせかすと雪菜は駆け出した。そして、大きく転んだ。
雪菜と宇美はいつも朝同じ駅で待ち合わせをする。
そこから電車に乗りすぐに学校につく。電車の風景を楽しむ間もないぐらいあっという間だ。
本当は雪菜はこの学校に通う予定ではなかったのだが、コネをつかって入学させた。
幼馴染の宇美がいないのが嫌だとごねたからだ。
「暑い」
「雪菜、もう少しっガンバレ」
二人はスカートを翻しうちわで扇ぎながら登校する。
雪菜に至ってはスカートをさらに短くしている。覗いたらばれるというのに。歩くとこ歩くとこに視線がついて回る。
雪菜の美貌は、学校外でも有名だ。学校でも私服だが普段着もももちろん女物でちょっとお嬢様チックで甘い感じのを着ている。
メルヘンな感じも好きなようでレースにハート柄などがいっぱいである。
日傘もしっかり持ってたりする。
そんじょそこらの女の子より美容に手間をかけている。
宇美の服装はモデル先で安く、または古着屋で買いあさった個性的な洋服で、レトロなものがよく似合う。
帽子を集めるのが趣味で、数十はある。
「昨日のドラマみた?和子超怖かったァ」
「まじで殺されなくてよかったね」
「うん、最後は絶対ハッピーエンドが良い」
会話だけ聞いていると普通の女子である。
が、本来はスポーツ大好き少年。
だが生まれて一度も少年扱いされてないため、体力測定は女子と同じだが、結果混ざってはずば抜けた運動神経を見せていた。
家に帰ればスポーツ観戦もするし、好きな球団もいる。
それに対して勉強は……笑ってお茶を濁すとしよう。
しかしテストでは運の良さを発揮してチェックシート問題は華麗に当てている。もちろん適当に書いただけである。
「あーやっと学校だよ」
宇美はけだるい声を上げた。靴を履き替えると、靴箱から落ちてきた手紙に気づく。予想通り和哉からだった。
「おーラブレター?」
「携帯番号とクラスとメアド」
「アイツは三の一か」
そっけないメモをかばんにしまうと宇美はそそくさと玄関を立ち去った。
最近はいつもこうだ。
新しい友達が出来たとかでかまってもらえない。
本当の女の子同士のほうがしゃべっていて楽しいのは当たり前だ。
美容は趣味だけど、男を取り合う話なんて聞いていて反吐が出るし、楽しくもない。
「もう、潮時かぁ」
雪菜はかかとをたたいて靴に足を押し込むとそっと昔のことを思い出した。
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